映画やドラマ等の動画コンテンツを視聴する上で、
重要なのが、映像と共に流れる音(サウンド)。
今では、動画配信サービスもサラウンド対応。
サラウンドコンテンツは手に入るものの、
イマイチよくわからないのが、音声フォーマット規格の違い。
チャンネル?ドルビー?何なのか?って話です。
サラウンドシステム(ホームシアター)の定義

サラウンド(Surround)は囲むという意味であり、
音に包まれる立体的な音響効果「立体音響」のこと。
スピーカーを増やすことで、サラウンド環境を作るわけ。
ただ、スピーカーが増やせば良いというわけでもなく、
正確にはスピーカーの数ではなく、音の信号(Channel:チャンネル)の数。
サラウンドシステムで「チャンネル(ch)」という言葉が出てくるのもそういう事。
それぞれのスピーカーから異なる音を出すことで、臨場感のあるサウンドとなるのさ。
ホームシアターという言葉も、自宅に映画館を作るということで、
サラウンド環境を作るという意味が強い。
ホームシアターシステム≒サラウンドシステムの認識で良いかと。
ステレオ(2ch)よりもチャンネルバリエーションが多い状態が、
一般的にサラウンドと呼ばれ、
ホームシアターシステムでは、5.1ch、7.1ch、9.1chという構成が多い。
チャンネル表記の違い:5.1ch、7.1ch、9.1ch
モノラルは1つの音なので「1ch」、
ステレオは左右で違う2つの音(信号)なので「2ch」。
数字の数≒チャンネルの数(スピーカーの数)というわけ。
低音出力のサブウーファーは別カウント扱いで、ピリオド区切り。
サブウーファー1本なら「◯.1ch」、2本なら「◯.2ch」となります。
5.1chは、ステレオ(フロント左右のスピーカー:2ch)に、
フロントセンタースピーカー(1ch)と、
後方左右にリアスピーカー2つ(2ch)と、サブウーファー(.1ch)。

7.1chは、5.1chに更にスピーカーが2個増える。
リアスピーカー2つの代わりに、
左右サラウンドスピーカー2つ、左右バックスピーカー2つへ。

9.1chは、ステレオ(フロント左右のスピーカー:2ch)に、
左右サラウンドスピーカーが更に2つ増え、左右サラウンドスピーカーが4つとなる。

また、ステレオ2.1chにフロントスピーカーのみ追加した3.1chや、
リアスピーカー1個のみ追加した4.1ch。
5.1chに後方スピーカーを追加した6.1chといった構成も有る。
現在、家庭向け最新サラウンド構成は、Dolby Atmosの11chですが・・・
Dolby Atmosの登場で、また話も変わってきています。
音声フォーマットの違い:Dolby Degital→Dolby Atmos
サラウンドシステム対応の音声フォーマット(音声仕様)といえば、
Dolby Degital、Dolby TrueHD、Dolby ProLogic IIz・・・と進化してきましたが、
Dolby Atmos(ドルビーアトモス)の登場により、
「サラウンド≒チャンネル数」という考え方も終了となりました。
Dolby Atmosは、新たに天井のハイトスピーカー(オーバーヘッドスピーカー)に対応し、
既存の平面サラウンドに、天井スピーカー2~4つ追加で、
3次元360度サラウンドの「イマーシブオーディオ」へ。
7.1ch、9.1chから、更にスピーカーを2個 or 4個増やすわけで、
従来の表記では11.1ch、13.1chとなるのですが・・・
ハイトスピーカーは、サブウーハー同様に別カウントになるので、
7.1.4ch、9.1.2chという表記になります。

例えば「7.1.2」という表記は、
「フロアスピーカー数、サブウーファー数、トップスピーカー数」を表しており、
「フロント3+サラウンド2+リア2」「サブウーファー1」「天井2」という構成。
ドルビーアトモスの必須レイアウト
・5.1.2配置
・7.1.2配置基準となるドルビーアトモス体験
・5.1.4配置
・7.1.4配置特に大きな部屋に適した高品質の音響効果
・9.1.2配置
ドルビーアトモスのスピーカー配置ガイド
また、Dolby Atmosでは、
3Dの立体音響「イマーシブサウンド」というイメージが強いですが、
一番の違いは、音をオブジェクト化する「オブジェクトオーディオ」になったこと。
従来の、チャンネルベースのサラウンドではなく、オブジェクトベースへ。
音が出ている物体の位置(座標)から、
最適なスピーカーを自動的に判断して、音が出る仕組みなのさ。
座標位置とスピーカー数から最適化(リアルタイムレンダリング)して、
音を出してくれるわけで、
スピーカーの組み合わせの自由度も増し、チャンネルという概念も無くなる。
よって、Dolby Atmos対応のブルーレイディスクは、チャンネル表記も消えているのです。
増えすぎたDolby規格も、Dolby Atmosに1本化できるというのも大きな利点。
Dolby Audio(ドルビーオーディオ)で一括りにされがちなんですけど、
ドルビーサウンド技術は、色々変化して複雑化してきたのさ。
- Dolby Surround:4.0ch
- Dolby Digital:5.1ch
- Dolby Digital Plus:5.1ch、7.1ch
- Dolby TrueHD:7.1ch、9.1ch
- Dolby ProLogic IIz:ハイトスピーカー(高低差表現)
- Dolby Atmos:ハイトスピーカー+オブジェクトオーディオ
サラウンドシステムといえば「Dolby Degital(ドルビーデジタル)」のイメージでしたけども、
今後は、ドルビーデジタルではなく、ドルビーアトモスなんだな。
サウンドシステムの音声フォーマットには、
同じくオブジェクトベースの「DTS:X」も登場しておりますが、
「Dolby Atmos」を採用しているブルーレイディスクのが多い印象。
iTunes、Netflix、Amazonプライムビデオも、Dolby Atmosを採用していますので。
ちなみに、似たようなDolby規格で「Dolby Vision(ドルビービジョン)」も有りますが、
こちらは映像の方、HDR(ハイダイナミックレンジ)技術の規格。
HDRの中でもトップレベルがDolby Visionです。
→動画の画質「SD、HD、フルHD、4K UHD、8K、480p、720p、1080p、HDR、Dolby Vison」の意味と違い
リアルサラウンドとバーチャルサラウンドの違い
サラウンド環境を作るには、スピーカーを四方八方の設置する必要があるわけで、
実際のところ、スピーカーを置きまくれる家庭は少ない。
というわけで、登場するのが「バーチャルサラウンド」。
「リアルサラウンド」のように多数のスピーカーを配置せず、
バーチャル≒仮想、疑似で、サラウンド環境を構築する方法です。

バーチャルサラウンドには、
擬似的にチャンネル数を増やすという意味も有りますが、
ホームシアターでのバーチャルサラウンドは、
どちらかというと、少ないスピーカーでサラウンド表現するという意味が強いかと。
フロントスピーカーだけで、サラウンドサウンドを実現する感じ。
ホームシアタースピーカーで、お手軽なサウンドバーを選ぶ人も多いハズ。
サウンドバーによるフロントサラウンドシステム。
ステレオスピーカー(2ch)で、マルチチャンネル信号や、
3Dサラウンド(Dolby Atmos、DTS:X)を表現したり、
天井に音を反射させる「イネーブルドスピーカー」を使ったり。
よりシンプルな配置で、3次元の立体音響を再現しているわけです。
ただ、バーチャルはお手軽な分、
リアルスピーカーのマルチチャンネルに比べると、臨場感は劣ります。
ホームシアターでのバーチャルサラウンドは、
基本的にフロントスピーカーで代用、どうしても背後からの音は弱くなるし、
少ないスピーカーで、様々なオブジェクト音を出すのは無理が有るわけで、
個々の音像感が薄れがち。音のバランスも変になりがち。
我が家のLGテレビは、Dolby Atmos対応ですが、
スピーカーは2個(2ch)なので・・・セリフが凄い聞きづらいです。
サラウンド感は有るんだけども、音量調整が難しい。
ちなみに、バーチャルサラウンドをお手軽に体験するなら、
Windows Sonic for Headphones、Dolby Atmos for Headphones。
普通のステレオイヤホンやヘッドフォンでも、
バーチャルサラウンドの立体音響を楽しむ事も可能です。
サラウンド用の音源ファイルも有りますので。
※参考→ダウンロード可能なドルビーテストトーンとドルビーアトモスのトレーラー
ヘッドフォンは耳からスピーカーも近く、またちょっと違う印象。
5.1ch、7.1ch、9.1ch等のサラウンドヘッドフォンも有りますが、
やはり、スピーカー設置のリアルサラウンドに比べると・・・って感じ。
サラウンドヘッドフォンにも、バーチャルとリアルがありますが、
リアルサラウンドヘッドフォンとはいえ、あくまでヘッドフォンなので、
あまり過度な期待はしないように。
ゲーム用と映画用で求める音も違うハズなので、選ぶ際は気をつけて。
Dolby Atmosの互換性
サラウンドシステムを構築する上で気になるのが、新旧システムの互換性。
Dolby Atmosは上位互換性(後方互換性)があり、
従来のDolbyサウンドシステムに対応しています。
ステレオ、5.1ch、7.1ch・・・と自宅の環境に合わせて出力してくれる。
従来のサラウンドシステムは、
作品と再生機器の両方が対応してないと駄目だったわけですが。
Dolby Atmosは、チャンネルではなく、オブジェクトオーディオなわけで、
作品が対応していないから、一部スピーカーから音が出ない・・・
なんてことも無くなるわけですね。
また、アップミキサー「Dolby Surround(ドルビーサラウンド)」対応製品なら、
従来のステレオ、5.1ch、7.1ch作品も、
自宅のサラウンド環境合わせてアップミックスしてくれる。
同様に、DTSのDTS:Xも上位互換性有り、
アップミキサー「Neural:X」にて、
DTSの従来のステレオ、5.1ch、7.1chコンテンツもアップミックスが可能です。
ただ、Dolby AtmosとDTS:Xに互換性はありません。
スピーカーシステムでは「Dolby Atmos」「DTS:X」の両対応している事も多いですが、
どちらかしか対応していないなら「Dolby Atmos」を選ぶかなと。
ちなみに、一口にDolby Atmosといっても、
劇場用(映画館)、家庭用(BD)、ストリーミング(VOD)で異なるらしく、
動画配信サービスで使われるDolby Atmosは、データ圧縮されているとのこと。
微妙に出てくる音も違うのでは無いかなと。
サラウンドシステムまとめ
サラウンド音声で映画のイメージは大きく変わる。
スピーカー次第で臨場感は増すわけで、
個人的には、映像よりも音声の方が、作品への影響が大きいかなと。
音で体も震え、心も震えるのかと。
ただ、音はこだわるほどにキリも無く、
値段も高額になり、場所も取るので気をつけて。
実際のところ、正解が分からないのがサウンド。
音声フォーマット(Dolby Atmos、DTS-X)でも変わるし、
スピーカーの位置や、映像作品のオブジェクト設定にも依るわけで、
結局の所、どれがホントに良いかわからない。比べるのもナンセンス。
サラウンドはあくまでサラウンド、良い音ともまた別の話。
リアルサラウンドは確かに、うぉってなるけども。
より本格的なのは映画館で体験できるから。
配線や設置の手間、場所を取る事を考えたら、
フロントスピーカーのバーチャルサラウンドで良いかなと。
最近のサウンドバーもDolby Atmosにも対応してますので。
もちろん、作品がサラウンド対応してなければ意味も無いわけで、
せっかくならDolby Atmos対応コンテンツを。
動画配信サービスだと、U-NEXT、Amazonプライムビデオ、Netflixで楽しめます。
→動画配信サービス15社を比較。各社VOD見放題の特徴と違い。
今では、Amazon Fire TV、Apple TVと、
Dolby Atmos端末も格安に手に入りますので。
→Amazon Fire TV Stick、Chromecast、Apple TVの比較と違い。動画再生端末の選び方。

まぁ、音楽のハイレゾなんてものも、
人間には判断しづらい「音」を売りにしているわけで、
基本的に話半分で。あまり深く考える必要も無いのかと。
ハイレゾだから高音質ってわけでも無い。
→音質と「CD、ハイレゾ、ロスレス」の関係。音楽ファイル形式「MP3、WMA、ALAC、FLAC、WAV、AIFF、AAC」の違い。
ハイレゾ環境を造ることで、高音質になってしまう。
これがハイレゾ商法と言われる所以です。
※参考→ハイレゾとCDの違いが本気で分からない。音源よりもオーディオ環境に投資するべき理由。 | ビジネス幼稚園
これは画質も同じ。4K高解像度だから高画質なわけでもなく、
dpiとか、HDRとか、有機ELとか、
様々な物が関係して高画質なのですよね。
→動画の画質と解像度「SD、HD、フルHD、4K UHD、8K、480p、720p、1080p、HDR、Dolby Vison」の意味と違い
せっかく見るなら最高の環境で視聴したいのだけども、
やっぱ良い作品は、画質や音質をも超越する・・・と思いたい。
私だってお金が有れば・・・
専用シアタールーム作って、リアルサラウンドにしますけどもね。